この度三次組若手寺族会でがん専門の精神科医・清水研先生のオンライン講演会を開催することになりました。「人生でほんとうに大切なこと」「もしも一年後、この世にいないとしたら」「他人の期待に応えない」「がんで不安なあなたに読んでほしい。」などの大変興味深く、仏教にも通じる御本を出していらっしゃいます。「がんで不安なあなたに読んでほしい。」と「他人の期待に応えない」を拝読させていたいた感想です。

感想「がんで不安なあんたに読んでほしい。」

著者はがん専門の精神科医・心療内科医の清水研先生。がん研究会有明病院・腫瘍精神科部長。「腫瘍精神科」とは、がん専門の心のお医者さんです。4000人以上のがん患者さんやご家族と対話してきた先生がいろんな悩みに答えていく本です。

(問)「自分はがんになったんだ」と思うと、悲しい気持ち、やりきれない気持ちでいっぱいになります。こんなときはどうしたらよいのでしょうか。

(答)このとき大切なのは、しっかり「悲しむ」ことなんです。悲しみや怒りなどのネガティブな感情はよくないものと思って勘定に蓋をしてしまう方も多いのですが、それは心理学の観点からはあまりお勧めできません。

『がんで不安なあなたに読んでほしい。』清水研著

悲しみや怒りはダメな感情だと思って蓋をしようとしてしまいますが、悲しいときは悲しみ、涙流せるときは流すことが大切だと教えてくださいます。「がんばれ」とか、「大丈夫」とか、そんなことも何も言わずにただただ聞いてくれる人がいたらいいですね。

(問)セカンドオピニオンを受けたいのですが、主治医に言いずらいです。

(答)セカンドオピニオンを希望することは主治医を信頼していないという意味ではありません。がん医療においては、患者さんにとって納得がいく治療を選択するピロセスとしてセカンドオピニオンを受けることを積極的に推奨しています。

切り出し方の一例。「先生のことはとても信頼しております。ただ、声がでなくなるということは自分にとって大きい問題なので、納得して治療を受けるためにも、ほかの医師の意見も参考までに聞いておきたいのです。」

『がんで不安なあなたに読んでほしい。』清水研著

このように具体的な悩みにも答えてくださっています。漠然な不安ではなく、具体的に一つ一つ考えていけたらいいようです。

他にも、会社をどうするか、家族との向き合い方をどうするか、患者力を高めること、など具体的な悩みを豊かな経験から応えられています。そして先生自身が患者さんから教わったことがたくさんあると仰います。

人間は思ったよりも強く、病を縁として、これまでの価値観から新たな価値観へ転換されて生きていく方々を幾たびも目撃されたそうです。患者さんから「MUST(しなければならない)」という他人の目に縛られた人生から「WANT(~したい)」という自分の願いに素直に生きていく生き方になる方や、「勝ち続けるための人生」から「幸せになるための人生」を歩む大切さなどを学ばれたと書かれてありました。

大きな喪失、苦しみにであった時、しっかりと悲しんでいくことによって、見えてくる世界があることを語っておられました。

感想「他人の期待に応えない」

現代社会では宗教を信仰する人の割合が相対的に低くなり、化学をベースにものを考えるようになりました。

しかし科学は「人間は死んだらどうなるのか」という問いに対しては納得がいく説明をすることができないので、「死」については謎が残ってしまいます。

そうすると現代人はどうするのか。最も手っ取り早いやり方として、説明ができない「死」については「考えることを避ける」という方法を、多くの人がとるようになったのです。

~略~

私はがんを体験した人の姿から、人は「死」を見据えながら生きることができること、「死」を見据えることは生を輝かせることにつながることを教えてもらいました。

『他人の期待に応えない』清水研著

「死生観」を持つ、つまり、自分の人生観にきちんと「死」を位置づけることは、「自分は成長し続けられる」という、幻想から離れ、現実を直視した上で人生後半を豊かに生きるために、必要なことだと思います。

『他人の期待に応えない』清水研著

ごまかさずに現実に目を向けることができたら、今と違った新しい人生の価値感に出会えることにつながるのかもしれません。

多くの患者さんが「社会に適応すれば幸せになれる」という「must」の自分が言っていたことは必ずしも真実ではないと、その方々の生き方をもって力強く教えてくれました。

『他人の期待に応えない』清水研著

社会の役に立つ人間にならなければならない。人のために働かなければならない。このくらいでへこたれてはならない。チャレンジし続け、成長し続けなければならない。お金を沢山稼がなければならない。みんなに認めてもらわなければいけない。私たちはいろんな「MUST」に縛られていきています。しかし、それはもしかしたら幻想なのかもしれません。そんなところには幸せはなくて、本当はもっと違うところに幸せはあるのかもしれないです。

若いうちは頑張ればなんとかなっていたことが、歳を重ねるにつれどうにもならないこと、ごまかせないものにであいます。その時、手放すことや、あきらめること、弱い自分を認めることができるかどうか。そこに価値感の転換がありそうです。他にも心にささった個所はたくさんありましたが、是非もっと清水先生の話を聞きたい方はオンライン講演会にご参加くださいませ。

清水先生のオンライン講演会のご案内

三次組若手寺族会主催で、2020年11月6日(金)19時~20時半まで、清水先生のオンライン講演会を行います。「病を抱えた方との向き合い方 ~病を通じて得た価値の転換~」と題して講演を約1時間ほど聞かせていただき、残り30分は質疑応答の時間です。がん患者さんとのかかわりを通して、先生自身が学ばれたこと、変わられたこと、人間の強さや弱さ、人生でほんとうに大切なこと、などのお話が聞けるかと思います。コロナ禍の今だからこそ、病は辛いですが、それを超えたものを聞かせてもらいましょう。

お申込みは西覚寺副住職まで。お申込みされた方に後日ZOOMのIDとパスワードをご連絡いたします。参加費無料、どなたでもご参加いただけますので、お気軽にお申込みください。顔なども映したくない方は映さなくても結構です。

三次組若手寺族会公開講座

三次市 十日市 西覚寺